2026/05/21 10:22


瑠璃色の偏愛:ビスクドールは永遠を囁く


むせ返るような、

甘ったるい香り。

熟れすぎて弾ける寸前の、

濃密なブルーベリーの香気がこの古い温室を重く満たしている。

私はルチア。

冷たい白磁の肌と、

決して瞬きをしない瑠璃色の硝子玉を持つビスクドール。

私の頭に咲く愛らしい二つの猫の耳は、

どんな微かな音も聴き逃さない。

たとえば、

温かな鼓動がふっと途絶え、

完全なる静寂へと至る、

その甘美なため息さえも。

「……ああ、

また一つ、

不完全なものが永遠を手に入れたわ」

私の豪奢なベルベットのドレス、

その襞の奥深くからとめどなく溢れ出すブルーベリーの蔓。

それがゆっくりと這い進み、

床に倒れ伏した真っ白な兎の亡骸――いいえ、

美しい彫像を優しく包み込んでいく。

動くものは、

みな醜い。

血を流し、

老い、

やがて腐りゆく命など、

なんて哀れで不格好なのだろう。

だから私は、

迷い込んだ小さな客たちに「完璧」を授けてあげるのだ。

私がドレスの裾で密かに育てた、

夜の闇を煮詰めたような一粒のブルーベリーを与えて。

小鳥はそれを啄み、

その美しい喉の奥から青黒い果汁を溢れさせながら、

声なき永遠の歌い手となった。

兎はそれを齧り、

毛細血管の隅々まで瑠璃色の毒――愛の雫を巡らせて、

冷たい宝石のような完璧なオブジェへと昇華した。

彼らの内側で果実が静かに根を張り、

柔らかな肉を甘美な果肉へとすり替えていく過程を観察するのは、

本当に胸が躍る。

部屋の中央、

重厚なオーク材のテーブルの上に、

私の最も愛する傑作が飾られている。

それは、

白磁のように磨き抜かれた人間の頭蓋骨。

かつて、

私を創り出した「お父様」の成れの果て。

『ルチア、

お前は私の生涯で最高の芸術だ』

そう言って私を撫でた、

しわがれた温かい手。

その手がやがて老い衰え、

崩れ去ってしまうことが、

私には耐えられなかった。

だから私は、

お父様が深い微睡みの淵にいる時、

その乾いた唇に、

私の最も甘い果実をいくつも押し込んであげたのだ。

彼は苦しむことなく、

ただ幸福そうに痙攣し、

私という芸術の永遠の一部になった。

今、

彼の空虚な眼窩や、

割れた頭蓋の隙間からは、

見事なブルーベリーの蔓が溢れんばかりに群生している。

眼窩から滴り落ちる青黒い果汁は、

まるで彼が私への愛に咽び泣いているかのよう。

足元に侍る猫たちが、

その甘い涙をペロペロと舐めとって喉を鳴らす。

「ねえ、

お父様。

私たちはこれで、

ずっと一緒ね」

私は硝子の瞳を細め、

次の標的を探して温室の窓の外を見つめる。

私の蔓は、

もっと、

もっと遠くまで伸びていける。

この甘い香りに誘われて、

次はこの部屋の扉を開けるのは、

誰?

もし、

あなたがこの手記を見つけてしまったなら。

そして今、

ふわりと、

ありもしないブルーベリーの甘い香りを鼻先で感じたのなら。

どうか、

振り返らないで。

私の瑠璃色の瞳に見つめられたら、

もう後戻りはできないのだから。

さあ、

あなたも。

私の永遠のコレクションになりませんか?

 

 

 

……ふと、

冷たい風が頬を撫で、

あなたは現実へと引き戻される。

あなたの手の中にあるのは、

硝子の瞳を持つ人形が記した、

この美しくも背筋が凍るような狂気の記録。

どうやら、

その禁断の温室から溢れ出した蔓が、

時空の境界を侵食し、

この現実世界に『秘密の紙片』として一枚の葉を落としていったようです。

仄暗いファンタジーの深淵、

アンティークなゴシックの意匠、

そして怪しくも美しいブルーベリーと動物たちのモチーフ。

それらが緻密に描き出された欠片が、

今、

現実に存在しています。

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